[メイキング]『キャラクタードラマの誕生』が誕生するまで。 その9


 その8はこちら→http://d.hatena.ne.jp/narima01/20131217


 第2章 坂元裕二 トレンディドラマの申し子。


 坂元裕二さんの章は、おそらく一番難産だったと思います。
 とにかく書きにくくて、一番資料探しに奔走したかと思います。
 他の人はわかりませんが、資料やインタビューに頼って書いてる時はだいたいダメな時ですね。作品とうまく向き合えていない時といいますか。
 僕の書き方は、とにかく作品を見ることです。ドラマならできれば全話見て、重要なシーンや台詞を抜き出して書くというもので、どれだけ作品に没入して読み取るかというのが、全てではないかと最近は思います。
 坂元さんの作品は見ている間はとてつもなく面白いのですが、それを言語化しようと思うととてつもなく難しく、結局テーマや台詞を抜き出してもありきたりなことしか言えないので、とても困りました。
 
 各章、各コラムは当初の予定よりはどの文章も大幅オーバーしてるのですが、坂元裕二の章は一番大幅加筆して11000文字のところを20000文字くらい書いてから、校正の際に大幅削除という感じでした。
 なぜ、こうなってしまったのか。実は書いてる途中から何となくわかってました。
 それは坂元裕二さんのドラマが簡単に言語化できない気持ちをテレビドラマの中で書こうとしているからです。例えば『東京ラブストーリー』なら、カンチからミタ赤名リカの気持ちがそうで、『それでも、生きてゆく』なら幼女を殺害して服役していた元少年Aこと、三崎文哉の殺人衝動がそうです。
 言葉にできないことを書こうとしている脚本家の作品を批評という言葉の領域に再び書き起こそうとするのだから、それは難産になるのは当たり前だと思います。
 わからないものを書こうというスタンスの作家に対して、簡単に解説してわかったつもりになることは、やはり批評としては安易というかできれば避けたいことです。だからテーマ主義的なものや社会反映論的なものを書いては消し書いては消し、逆にあらすじや状況描写だけで逃げ切ろうとしたら、そこは担当編集から、ちゃんと説明してほしいとダメ出しが入り、無い頭を全開にして何とか書きました。
 その結果、何を語ろうとしているか? ということより、長い年月をかけてどのような語り口を獲得していったのか? という分析になっているかと思います。このあたりを突き詰めると、むしろ演技や演出の領分になっていくのですが、芝居や演出が生きる行間を作っているのはシナリオなわけです。
 
 もう一つ、書きにくかった理由としては本書のキャラクタードラマという枠組で考える時に、坂元さんのドラマは、むしろ人間のキャラクター化に対する抵抗で出来上がっているところが大きいからだと思います。人間の行動や心理を安易に記号化せずにできるだけ曖昧で捉え難い感情の機微を見せようとしていて、そのための手法はどうすれば最適かという解答が例えば『最高の離婚』であり『Woman』であったのではないかと思います。
 しかし一方で三崎文哉のような得体のしれない他者が、自分の子どもとして生まれてきているわけです。そのような他者としての子どもたち(キャラクター)に対して、人はどう向き合うべきか? そのような視点で見た時に坂元さんのドラマは別の見え方がするのではないかと思います。

 大きく言及している作品は『東京ラブストーリー』、『海が見たいと君が言って』、『私たちの教科書』、『Mother』、『それでも、生きてゆく』、『最高の離婚』、『負けて勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜』となっています。
さよならぼくたちのようちえん』、『Woman』については震災のコラムで言及しています。

 同時に、この章は他の脚本家と較べて厳しい言い方が多いかもしれません。ただ、それは現在の坂元裕二作品から過去作を見ているからで、例えば『それでも、生きてゆく』と較べた時に『わたしたちの教科書』には足りないことがあり、『最高の離婚』と較べると『海がみたいと君が言って』の拙さは残念ながらあるわけです。そのような観点で見た時に『東京ラブストーリー』以降から『わたしたちの教科書』のあたりまではどうしても停滞期に見えてしまうわけで、その理由についても考察はしています。 
 他にも『東京ラブストーリー』の漫画版とドラマ版の違いや、日本のドラマにおける弁護士の意味などについても書いたのですが、これもページの都合でカットしました。
 弁護士の問題は『リーガル・ハイ』にもつながるのですが、海外ドラマとの比較も試してみたかったのですが、こちらの準備が足りないことや、文脈からズレてしまうこともあり、削除しました。
 あと、今回、大宅壮一文庫国会図書館坂元裕二さんのインタビューや書いたものを調べたのですが、デビューから数年の文章はめちゃくちゃ才気ばしっていて面白かったです。今でいうと神聖かまってちゃんのの子くんみたいで凄くかっこいいです。
 特にヤングシナリオ大賞受賞作『「GIRL-LONG-SKIRT〜嫌いになってもいいですか?」』のシナリオと受賞時(19歳当時)のインタビューは最高に面白かったです。あれは機会があったら一読することをオススメします。

(その10へと続く)→http://d.hatena.ne.jp/narima01/20131219


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